ムビラ音楽の真髄「ビラ(儀式)」

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昨年に続いて今年も東京の一番山奥で開かれたムビラの儀式「ビラ」。
一晩中ムビラを演奏して歌って、踊って、楽しんだ。

JR五日市線の終着駅「武蔵五日市駅」から更にバスに乗って川沿いをさかのぼり、山の奥へと分け入っていく。45分ほどで下車し、清流にかかる吊り橋を反対岸に渡ると会場がある。
宿泊小屋とキッチン、川にせり出した舞台があるだけの簡素な施設だが、それがかえって良い。

自宅から現地までドアトゥドアで4時間。辿り着くまでは、その距離がおっくうになりそうだが、来てしまえば、「やはり来て良かったなあ、そういえば去年も同じように感じたっけ」と思い出した。街の磁場から解き放たれて自然の懐にいだかれるのは気分がいいものだ。

男性陣は薪を割り、焚き火を作る。昔石窯パン屋で働いていたというタカシくんは見事な斧さばきで真っ二つに割る。女性陣は料理を作る。フライパン3つでひたすらキャベツを炒めている。毎 日トンデにご飯を作っているマジタテグルのワカちゃんが陣頭指揮をとる。この日の献立はチキンのトマトソース煮+キャベツ炒めとご飯ジンバブエスタイル。 ジンバブエ式だから味付けはシンプルに塩コショウだけ(厳密にいえば胡椒も使わないんだけど)。ジンバブエでは毎日の食事にはマギーの化学調味料を味付け に使う家も多いけど、儀式では伝統に則り昔ながらのスタイルを守る。みんなが協力して20名以上分の料理があっという間に出来上がった。野外で食べる食事 はとにかく美味しい。

夜8時過ぎから演奏開始。

焚き火がパチパチと火の粉を巻き上げる中、みんなでネマムササを合奏。
10人での合奏はかなりの迫力。
木々の間から垣間見れる星空が綺麗だ。

パシチガレムビラズ、マジタテグル、シンボッティのムビラを演奏するエミコちゃん&リサコちゃんらがムビラを演奏。ムビラトロンのコイケ龍一さんはリンバ やカリンバ、前述のタカシくんが三線を弾いたりと盛りだくさんな内容。時に盛り上がり、時にゆっくりと音と音の間を味わう。

夜が深けるにつれ、更にテンションは上がり、参加者も体を動かし、自由に踊る。龍一さんも太鼓やシェーカーでムビラ演奏に加わり、演奏が厚みを増す。ホーショー(シェーカー)のアドリブ掛け合いが楽しい。

深夜0時を過ぎると普段のライブでも味わうことの出来ない境地に至る。
僕らのムビラ演奏は通常ライブだと一曲平均10分くらい。この日の儀式では30分平均だった。普段のライブが10kmマラソンだとすれば、儀式はフルマラソン42.195km。マラソン走者がランナーズハイになるように、奏者は演奏ハイ、踊る人たちもダンスハイだ。

2時、3時くらいになると、さすがにテンションは低め、休憩時間も長くなる。しかし、演奏は続く。4時を過ぎると空が白んでくる。終わりを予感し、ラスト スパートで再び盛り上がる。演奏を終えたのは5時半頃だっただろうか。ジンバブエでの儀式のように霊媒師はいなかったが、深夜未明、参加者の一人が獣のよ うな雄叫びを上げていた。動物のスピリットが乗り移ったのかもしれない。

一晩中ムビラが弾き続けられて初めて本格的なムビラ奏者。
トンデとスミ、ハヤシエリカ、ワカはしっかりと最後まで力を緩めずに演奏していて彼らの存在を誇らしく思った。

街においては自分自身を見失わないためにも音楽は重要だ。しかし自然の中で純粋に楽しむ為に演奏すると、これが本来の音楽であり、自分たちの原点でもあると改めて感じる。

朝、仮眠と取り、ミルクティーとパン、玉子焼きで朝食。
清流でひと泳ぎ。川の水は冷たいがしばらく浸かっていると慣れてくる。
とにかく水が澄んでいて綺麗だから流れに身を任せていると体の中から浄化されるような気持ちになる。

会場をみんなで掃除して、最後にネマムササを再び合奏して終了。
みんなで創り上げるビラ。それぞれが自由に楽しんでいるのがいい。

来年もこの場所で会いましょう。