世界から無視される100年前の大虐殺と戦後最大の犠牲者を出す戦争

バ レンタインデーが近付いてきましたね。僕も子供の頃は日本のチョコレートメーカーの宣伝にまんまと乗せられて、「誰かからチョコもらえるかな」と淡い期待 に心揺れ動いたものです。しかし、そんなイノセントな子供心とは裏腹に、チョコの原料カカオは主にガーナなど西アフリカなどの農園で子供たちを含んだ労働 者が過酷な条件下で働いて生産されているという問題が指摘されています。カカオの実は安価で買い叩かれ、砂糖を混ぜて先進国住民の口を潤すチョコに変身し ます。甘いチョコをめぐるグローバル社会のほろ苦い現実。最近ではそのシステムを変えようと、フェアトレード商品のチョコレートを購買しようという運動も 起きています。スイスチョコレートの一社は自社の原料調達システムを改めるという発表をしたそうです。
 このチョコの例に限らず、 知ってしまうと居心地が悪くなるから無関心なふりをする事実というものが世の中にはあります。今回のテーマはチョコレートではなく、コンゴ民主共和国とい う国の過去と現在について。僕たちが今使っているパソコン、携帯電話、プレイステーションなどのゲーム機を作るために欠かせないコバルト、タンタルという 希少金属は多くがコンゴ産であること、アメリカによって日本に投下された原爆の原料ウランの80%がコンゴ原産であったこと、これらの事実を知れば貴方も コンゴとは無関係ともう言えないでしょう?

コンゴ民主共和国はジンバブエの北隣のザンビアの北隣にある中央アフリカに位置する国。ダイヤ、金、希少金属、石油など有用な地下資源が豊富に眠っていま す。1960年に一度は独立しましたが、現在に至るまで安定せずに内戦状態です。なぜなら豊富な資源を巡り、多国籍資本、アメリカなどの強国、ジンバブエ を含むアフリカの周辺各国が背後で暗躍しているから。今日まで続いてきたコンゴ内乱の原因をひも解くと、ヨーロッパ諸国による奴隷貿易と19世紀のベル ギー国王による植民地支配に行きあたります。

「地獄の黙示録」はフランシス・コッポラ監督の名作として有名なベトナム戦争映画です。でも、あの映画のベースになったのは、コンラッドというイギリス人 が書いた小説「闇の奥」であり、舞台はベルギー国王による搾取が行われた時代のアフリカ・コンゴだったことはほとんど知られていません。大学教授の藤永茂 氏は「闇の奥」を自身で翻訳したのち、さらに作者コンラッド、そしてコッポラ監督までを告発する書物「闇の奥の奥」を書きました。藤永氏は高齢になられた 現在も精力的に執筆活動を続けております(ブログもありますhttp://huzi.blog.ocn.ne.jp/ )。

今回のストーリーは「闇の奥の奥」をベースにしておりますが、本文から要約してコンゴを中心に世界史を復習しましょう。大航海時代という美名のついたヨー ロッパによる侵略競争は15世紀から始まります。 ヨーロッパ各国はアメリカに侵略して大農園を造営、そこでの労働力としてアフリカから黒人を購入し、アメリカで奴隷として働かせていました。売られた奴隷 の数は推定2000万人でその半数は劣悪な環境の船内で死んでしまったといいます。とんでもない人種差別の時代、人類史上最大級の犯罪です。その影響で、 アフリカは労働、リーダーシップを担う男たちが不在になり社会が崩壊していきます。これがまず今日のアフリカ問題の根本的原因となります。ちなみにビート ルズで有名なリバプールというイギリスの港町は奴隷貿易の中継地点として栄えたことを、僕はこの本で初めて知りました。

その後、日本でいう江戸時代末期、アメリカの黒船が日本を恫喝しにやってきた19世紀後半まで、350年間も奴隷貿易は続きましたが経済的に採算が取れな くなると廃止されます。アメリカに比べて人口が多かったので、アフリカはあまり侵略されていませんでしたが、帝国主義的侵略競争が激しくなり、更なる植民 地を獲得するためヨーロッパはアフリカに侵攻を開始します。ヨーロッパの小国ベルギー国王レオポルド二世は、イギリス、フランスなど強国の隙間に入り込 み、現在のコンゴ民主共和国にコンゴ自由国(自由という名前に煙に巻かれないようご注意)という私有地!を確保します。国王は自己宣伝を行い、未開で野蛮 な暗黒大地に「文明の光」をもたらす啓蒙者だとしてヨーロッパで称賛されていたのですが、実際現地で起きていたことはまさに天国と地獄ほどの差がありまし た。当時は産業革命の時代でダンロップさんがタイヤを発明した為に天然ゴムの価値が高まっていました。国王と共謀したベルギーの資源開発会社と彼らの私設 軍隊に強制されて、コンゴの人々は奴隷のように天然ゴムや象牙の採取をさせられており、刃向かう者は銃でみな殺していたのです。握手をするときに電池を隠 し持って軽い電気ショックを起こす、虫眼鏡を使って火を起こして太陽神の使いであると信じ込ませるなど、今聞いたらアホらしい手法も、侵略のためには使わ れました。レオポルド2世の影響下、非道なやり方で搾取が続いた結果、なんと約20年の間に数百万人もの人々が殺されたのです。勇気のあるアメリカ黒人ウ イリアムズ氏の告発や有志の女性含む白人モレル氏やケースメント氏らの反対運動によりコンゴでの虐待は終止符が打たれることになりました。植民地としての 地位は変わりませんでしたが・・・。

ナチスドイツがユダヤ人に対して行った虐殺も数百万人といわれております(正確な人数はいまだに論争中であり、危険なので触れません)。人類史上の大犯罪 「人道に対する罪」と名づけられて、知らない人はいません。沢山のドキュメンタリー、ハリウッド映画も作成され、その悲劇は折に触れて伝えられて人々の心 に刻まれています。ところが時代も40年程度しか変わらないコンゴで起きていたこの大虐殺は、ほとんど世界に知られていないのです。ドイツは戦後莫大な賠 償金をイスラエル、ユダヤ人に支払い、贖罪を続けていますが、ベルギーからコンゴ人への賠償金が払われたという話は聞いたことがありません。

更にコンゴの悲劇は現在も続いています。先述したように内戦が一向に終わらないからです。そして、ゴムの採取から希少金属の採取に商品が代わっただけで、現在でも奴隷的搾取が行われています。大阪大学グローバルコラボレーションセンター特任助教ヴァージル・ホーキンス氏(ブログ http://stealthconflictsjp.wordpress.com/)に よれば「コンゴ民主共和国の紛争は、10年以上に渡り、周辺8カ国を巻き込みながら、第二次大戦後に起きた紛争としては世界最多である540万人の死者を 出している。ところが、これほどの規模にもかかわらずメディアが取り上げることは稀であり、特に日本においては、この紛争の存在すら十分に知られていない 状況である。」という状態です。イラク戦争、アフガン戦争よりも悲惨な状態なのに国際社会から無視されています。レオポルド2世による大虐殺も含めて、 20世紀における世界の悲劇の中心地と言っても過言ではありません。

僕もそんな大変なことになっていることはいままで全く知りませんでした。世界に知られていない要因として、搾取を知られたくない資源開発業者、その原料を 元に製品を作る企業、企業に不都合な記事は取り扱わないマスコミたちの馴れ合い、そして都合の悪いことには目をつぶりたい僕たちがいるのです。フェアト レードが叫ばれているのは、この世界でアンフェアなトレードが横行していることの裏返し。気づかないうちに血で染まった原料を使った商品を購入すること で、自分も共犯者として連帯責任を追っているのがこのグローバルな社会の現実です。携帯、パソコン、ゲームで便利を謳歌している僕たちの快適な生活は、コ ンゴをはじめとしてその他搾取されている国々で流れ続ける血と涙と汗によって支えられていることをまずは知るところから始めましょう。