僕達の無関心が象を殺している


ジンバブエで象のことを「ンゾウ」と呼ぶ。ジンバブエを知る日本人の間では有名な話。遥か遠く離れているのに、この不思議な一致。ジンバブエに親近感が湧いてくるでしょう?

 2009年4月に初来日して全国ツアーを成功に終わらせた僕のムビラの師匠「ルケン・パシパミレ氏」のトーテムは「ンゾウ」。トーテムとはある部族が信 仰の対象とする動物や植物などのことで守護神のようなもの。日本人も遥か昔はトーテムを持っていたが、忘れてしまったという。ショナ族のトーテムは野生動 物であることが多いが、自分のトーテムの動物を食べることはタブーである。したがってルケン氏も決して象は食べない。

 「えっ、アフリカでは象を食べてるの?」と驚く人もいるかもしれない。あまり知られていないが、アフリカ中央部あたり、そしてジンバブエでも象は密かに 食べられている。僕が数年前ジンバブエ滞在中にも、ある日本人旅行者が「現地の人から象を食べさせてもらった」という話を聞いた。「はじめ人間ギャートルズ」ではないが、人間はその昔マンモスを食べていたのだから、その近縁である象を食べていてもおかしくはない。

 しかしながら、日本人にとって象とは、動物園で愛でる対象であり、人間が乗ったり、サーカスで働かせたりすることは容認しても、食べようと思う人はいないだろう。

 象肉はないけど、アフリカでは野生動物の肉は「ゲームミート」と呼ばれて、普通に売られている。僕もシマウマ、バッファローなどの野生動物をレストラン で食べる機会があったが、思ったより柔らかい肉質で美味しかった記憶がある。だが、もし象が料理されて出されてもあまり食欲は湧かなかっただろう。子供心 に「ギャートルズ」の骨付きマンモス肉は美味しそうに見えたけどね。

 なぜ象の話をするのかというと「この70年の間にアフリカに住む象の数が10分の1に減ってしまった」というショッキングな以下の記事を目にしたからだ。記事はザンビア大使を務めたこともある環境学者石弘之氏によるもの。

http://eco.nikkeibp.co.jp/article/column/20090511/101381/

 環境の変化、人口の増大による象と人との摩擦などもあるが、実は最大の減少の原因は、日本人にも深ーい関係がある。知っている人もいるだろうが、象が殺 される最大の理由は、高級印鑑などに使われる象牙を採取するためである。現在ワシントン条約で象牙取引は禁止されているが、それでも密漁された象牙の大部 分は日本と中国に密輸されるという。象は殺されて牙だけとって放置されるのだ。

 最近でも、条約により販売できずに保管している象牙を例外的に日本が買うというようなニュースがあったと記憶している。生活に困った人たちは象牙を売ることで生き延びることができるというせっぱつまった理由がある。
日本・中国で象牙製品の販売が禁止されない限り、これからも象の乱獲は続く。遠い国の出来事で実感が沸かないが、白い象牙には血がまみれている。みんなで象牙製品を使うのをやめましょう。

 記事の中でもう一つ気になったのは、これまでほとんど人を襲わないと言われていた象が最近になって襲うようになったこと。はっきりとした理由は分かっていないけど、人への復讐を始めたのかもしれないというのだ。
象は大変頭が良く、海馬が発達しているので記憶力に優れているという。子象だった時に目の前で親が殺されて、その恨みを長年抱きながら大人になり、人間に反撃をしているとしたら・・・。