「アフリカノオト」(コイケ龍一著) 紹介

9784309922157

2020年10月中旬。コロナに翻弄されて、ライブ活動も一切出来なかった一年の終わりが見えてきた頃、嬉しい知らせが届きました。親指ピアノのバンドを集めたライブイベント、ムビラサミットの実行委員として、長くお付き合いをさせてもらったカリンバ・太鼓奏者のコイケ龍一さんが、アフリカでの体験をまとめた本を出版したのでした。

普段は物静かなのに、ライブでは体の内側から溢れるエネルギーがほとばしる演奏を見せてくれる素晴らしいアーティスト。彼ならきっと、アフリカ体験の魅力を存分に表現してくれるに違いないと確信していました。早速、予約注文して取り寄せて、すぐに読了。期待通りの内容でしたので、ここで紹介させていただきます。

高校卒業後、将来のビジョンを描けずに悩んでいた20歳のときのこと。家出中の滞在先で出会った男性から、「明日死ぬとしたら何をする?」と突然問われて、「僕ならアフリカに行くな」と答えたら、「じゃあ行けよ」と背中を押され、実際に行くことを決意。右も左も分からない状態で単身ケニアへ。

騙されそうになったり、騙されたり、パスポートをボットン便所に落としてしまったりの珍道中を経て、太鼓を探しにタンザニアへ移動。海辺の町バガモヨでのダンス、太鼓修行、そして世界的に著名なカリンバ奏者の故フクウェ・ザウォセさんと出会い、カリンバ修行で滞在した1年間を綴ってあります。

タンザニアの人たちと、田植えしたり、牛の放牧に付き合ったり、一日海辺でぼーっとしたりと、アフリカ時間をたっぷり満喫。「ハクナターブ(大丈夫)」と言って、その日暮らしで今を最大限に楽しみ、お金を散財してしまうタンザニア人のおおらかさ、自分と自分の人生に対する絶対的な肯定感を目の当たりにして、「世界のど真ん中で生きている彼らを羨ましく」思ったり。飾らず、屈託のない現地の人々との交流を通じて、沢山のことを気づいていきます。

呪術師による病気払いの儀式に遭遇、そこで奏でられていた太鼓の”ショーではない”生きた音楽に触れて人生観を揺すぶられ、タンザニアの人々の作り出す音楽の力強さを体験して、人生に大切なものを思い出します。そのストーリーは、自分がジンバブエでムビラの儀式に参加して、”生きた音楽”と出会った体験とも相似していて、「分かる、分かる!」と、とても親近感を持ちました。

ダル・エス・サラームへ出かけるためバスに乗っていると、坂道でブレーキが壊れてしまい死にそうになったり、カリンバの故郷を訪ねに田舎に出かけて、自分らしく生きている女性に出会い、人としての在り方に感銘を受けたり、マラリアにかかって高熱にうなされたり、ドラマのようなハプニングの連続です。日本の都会という温室のような環境で育った青年が、幾多の困難を乗り越えて、手探りで自分の探しものを見つけて、生きていく力を取り戻す成長の記録でもあります。

文章にはどこか間の抜けたような、アフリカのゆっくりとした時の流れ、デコボコの個性を持った人たちがそのままに生きている姿を上手に描写しており、アフリカに行ったような気分になれます。また、コイケさん自身の正直さ、優しさなど感性が滲み出ており、それが本の魅力でもあります。

最後に本の中で一番好きな一文を紹介します。「アフリカンドリームは(中略)モノの豊かさではない。お金でもない。目に見えないけど誰にでも持つことができる、人が幸せになるために必要な内側の世界、豊かな心の世界のドリームだ。」。

この本をアフリカ好きの全ての人にオススメします。

 

●「アフリカノオト」(コイケ龍一著)9784309922157

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309922157/

 

 

 

 

タンザニアの大きな親指ピアノ、イリンバ

タンザニアの大きな親指ピアノ、イリンバ