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シンボッティ氏初来日ツアーライブ報告

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シンボッティ氏(Rinos Mukuwurirwa”Simboti”)。
ムビラ奏者にして製作者。
伝説の奏者バンダンビラ(ムビラを壊す人の意)から直接ムビラの伝統を受け継いた一人。

いつもジンバブエの首都ハラレ郊外の自宅で黙々とムビラを作り続けている。
そのイメージが強すぎて、家の外にいるところを見るだけで違和感を覚えるのに、
まさか日本に来るなんて、夢のようで最初は信じられませんでした。
でも実近修平さんを中心とした沢山の生徒たちの尽力により、日本ツアーが実現したのです。

4月末から始まったツアーも中盤に入り、
6月1日、鎌倉たけのこ庵で開催されたシンボッティのライブに参加してきました。
儀式で演奏するパートナーが現地には2名いるとのことでしたが、
実はシンボッティ氏のちゃんとした合奏を聞くのは初めて。
基本的に儀式でしか演奏をしない人なのです。
ライブは現地の儀式のようにロウソクの灯りの中で行われました。

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彼が制作するいくつかのチューニングの中でも
主に演奏するのはバンダンビラが弾いていた、ハイ・サンウェメ。
マイナー調のように聞こえるその音階はとっつきにくくかなり個性的。
逆に気に入った人にとっては、それ以外に考えられない最高の音世界となります。
10年習って、まだまだ修行中と謙遜する修平さん。
全5曲の演奏で、だんだんと二人の息がかみ合い高まっていく音曼荼羅を堪能しました。

曲間の解説では全ての曲には意味があり、
「カリガモンベ」はハンターのための曲、「ムカティデンデ」は雨を降らせるための曲など、
何のために演奏するのかが決まっているというのがとても興味深かったのです。

彼のメッセージの中に、
「日本は欧米の影響を受けつつも自分たちの文化を守っていて、
そこが素晴らしいからそのまま文化を大切にしてほしい。」
というものがありましたが、それはシンボッティ氏だけに限らず、ルケン・パシパミレ氏、
ガリカイ・ティリコティ氏、フォーワード・クエンダ氏ら
これまで来日したムビラ奏者全員に共通するコメントです。
彼らは自分たちの文化に誇りを持ち、大切に受け継ぎ、次世代に繋いでいく
人たちだからきっと同じ想いを持つのでしょう。

僕がムビラをより深く好きになったのも、この音楽が大地に根差したものだから。
自分の感覚では日本もずいぶん欧米化していると感じますが、
過去に植民地支配を受けてキリスト教の布教が徹底されたジンバブエからすると、
独自文化がまだまだ残っているように見えるのです。
「コップに入った半分の水の例え話」のようなものかもしれませんが、
日本にも、まだ半分もコップに水が入っているのなら
その半分、「日本の大地に根ざした文化」を大切にしないといけないなと改めて感じました。

実は過去に彼から曲の教えを授かったことも数回ありました。
でも、バンダンビラ直伝の演奏スタイルは当時の僕に奥が深すぎて、
彼から習うことを選べませんでした。
他の演奏スタイルと交わることを良しとしない厳格さにも
習うなら相当の覚悟が必要だと感じたのです。

シンボッティ氏に最後にお会いしたのは、もう10年近くも前。
今回久々の再会でしたが、一昨年に急逝したムビラ紹介者くまさんの話、
お互いの子供の話など10年の空白を埋めるように時間の許す限りお話をしました。
そして修平さんの計らいでライブの前に少しだけ合奏させてもらう光栄にも預かりました。

大きな手、圧倒的な存在感。
シンボッティ氏は、ジンバブエのムビラ界における生きる伝説と呼んで差し支えない人物。
彼のメッセージ、演奏を体験して、開かれることを待っている心の回路が見つかるかもしれません。

この後名古屋と京都へ移動していきます。
是非お近くの方は彼の演奏を聞いてみてくださいね。
ツアーの日程はこちらからチェックしてください。
http://bit.ly/2rNysDp

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芸術作品の域に達しているシンボッティ氏が作るムビラ。

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